PTAの学校への寄付の考え方について【指針】

横須賀市PTA協議会 顧問
社)横須賀市PTA協議会 事務局長
櫻井 聡

目次

1.はじめに
2.PTA備品か寄付か
3.PTAが支出できるルール
4.寄付ができるかもしれない物と条件
5.周年事業の寄付、寄付目的のバザー、ベルマークにおける寄付について
6.寄付が決まったら
7.参考




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1.はじめに

 

 「PTA会費の繰越金もあるので、学校に何か寄付をしようと思うのですが、学校に何が良いか聞いて大丈夫でしょうか?」
そんな質問を良く聞きます。
たしかに学校では「PTA寄贈」などと書かれたテントや冷水機などを目にすることがあります。
PTAの寄付とは、どういうケースで行われるのでしょうか?
また条件やルール、手続きなどはどうなっているのでしょうか?

ここではPTAの寄付の考え方をまとめてみましょう。

 

 

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2.PTA備品か寄付か

 

先ほどの質問、
「PTA会費の繰越金もあるので、学校に何か寄付をしようと思うのですが、学校に何が良いか聞いて大丈夫でしょうか?」
寄付はNGではありませんが、この質問の答えはNGです。
寄付は「PTAの自発的な要望で、合意形成ができている場合」でなくてはなりません。
「学校に何が良いか聞く」のは自発的な要望とは言えなくなるためNGです。
また、地方財政法「本来公費で負担すべきお金を私費(保護者負担金)やPTA会費で負担することは違反」に当たる可能性もあります。
 

本来、会費の繰越金は寄付ではなく、しっかりとPTA活動計画を立てて、その活動の予算として使われるのが望ましいです。
公費・私費の区分をしっかり理解して購入すれば、そのほとんどが寄付ではなく、PTA備品として購入が可能です。

(「PTA会費で支出してよいもの、いけないもの」、「寄付・寄贈ついて」参照)

こうした繰越金がある時でないと購入できない物品や、実施できないイベントもあると思います。
しっかりと運営委員会で話し合って、PTAとして本当に必要な物・活動を予算建てし、総会で承認を受けて支出しましょう。

また、公費の区分の物でも、市や県が負担する配分予算で行う標準的な水準を上回るもので、より良い教育環境、学校教育の充実・発展を望むPTAの自発的な要望で合意形成ができている場合は購入が可能です。
これらもほとんどがPTA備品として購入可能ですが、使用するのが主に学校側である場合やランニングコストが学校側に由来するものなどは、PTA備品とするのは合理性の面で問題があります。
その場合は学校長に寄付について相談してみましょう。

 例)
熱中症対策用テント
※市や県が負担する配分予算で行う標準的な水準を上回るもので、より良い教育環境、学校教育の充実・発展を望むPTAの自発的な要望で合意形成ができている。
※「気候変動により熱中症のリスクが高まっており、市や県が負担する配分予算で行う標準的な水準のテント数に加え、屋外の授業や活動に全ての子どもたちが活用できる熱中症対策用テントが必要」というPTAからの要望。
※使用するのが主に学校側であり、学校が管理することが合理的である。
(学校が管理することが合理的であるにもかかわらず、学校がPTAの備品を使い続けるのは実質上の寄付に当たる可能性があります。また、PTAの備品を学校が使用中に破損、ケガなどがあった場合にPTAが補償をしなくてはならない可能性があります。寄付の手続きをすることを推奨します。)

 

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3.PTAが支出できるルール

 

ここまでの説明をPTAが支出できるもののルールでまとめてみましょう。
(「PTA会費で支出してよいもの、いけないもの」、「寄付・寄贈について」参照)

学校における教育活動費には、
①施設の維持・管理や教科指導に係る経費(公費)
②受益者負担の考えに基づく経費(私費)
の二つがあります。

 ・ルール1
PTA会費から支出可能なのは②の「私費」であり、①の「公費」の支出は原則NGになります。
これらの支出はPTAの経費として支出され、学校に設置・保管される場合は「PTA備品」となります。
また、「私費」であっても児童・生徒個人に直接利益として還元されるもの(教材費や遠足や修学旅行、演劇鑑賞会などの参加経費など)はNGです。

 

・ルール2
「公費」にあたる物のうち、市や県が負担する配分予算で行う標準的な水準を上回るもので、より良い教育環境、学校教育の充実・発展を望むPTAの自発的な要望で合意形成ができている場合は購入が可能です。

 

・ルール3
「ルール1」「ルール2」でPTAが購入可能としたこれらのほとんどは、PTA経費・備品となります。
例外として、「ルール2」の「公費の区分でも、市や県が負担する配分予算で行う標準的な水準を上回るもので、より良い教育環境、学校教育の充実・発展を望むPTAの自発的な要望で合意形成が出来ている」もののうち、使用するのが主に学校側である場合やランニングコストが学校側に由来するものなどは、PTA備品とするのは合理性の面で問題※があります。
その場合は学校長に寄付について相談してみましょう。 

※「PTA備品とするのは合理性の面で問題」
使用するのが主に学校側である場合やランニングコストが学校側に由来するものなど、学校が管理することが合理的であるにもかかわらず、学校がPTAの備品を使い続けるのは実質上の寄付に当たる可能性があります。また、PTAの備品を学校が使用中に破損、ケガなどがあった場合にPTAが補償をしなくてはならない可能性があります。)

 

 

 

 

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4.寄付ができるかもしれない物と条件

 

「3.PTAが支出できるルール>ルール3」で示した通り、PTAが購入し設置・整備するものは基本的には全てPTA備品となりますが、例外として、使用するのが主に学校側であり、学校が管理することが合理的であるものは、学校長と相談のうえ寄付も検討することができます。そ
の場合の大前提として、下記の「寄附物品受入れの基本事項」をクリアしていることが重要です。
また寄付の受入れについては学校長の判断となります。

 

〇寄附物品受入れの基本事項
(1) 寄附物品が、学校運営に役立つものであり、管理上支障のないものであること。
(2) 寄附受入れ後、当該物品の維持・管理に多額の経費を要しないものであること。
(3) 寄附物品が使用上安全なものであること。
(4) 寄附物品が学校用品としてふさわしく、著しく高価なものでないこと。
(5) 寄附行為が自発的なものであり、かつ、団体等からの寄附にあっては、全員の合意が得られているものであること。
(6) 寄附行為が売名行為等私的利益を目的としないものであること。

 物品等寄附受入要領(令和3年4月1日改正版)より抜粋

 下記の①~⑥すべてに当てはまる物であり、条件が揃えば寄付ができるかもしれない物となります。

 <寄付ができるかもしれない物と条件>

①「寄附物品受入れの基本事項」をクリアしている。

②「公費」の区分だが、市や県が負担する配分予算で行う標準的な水準を上回るもので、より良い教育環境、学校教育の充実・発展を望むPTAの自発的な要望で合意形成ができているもの。
※標準的な水準のものをPTAが支出することは下記の法律からみてもNG
学校教育法「学校設置者が学校経費を負担する」
地方財政法「本来公費で負担すべきお金を私費(保護者負担金)やPTA会費で負担することは違反」

 ③使用するのが主に学校側である場合やランニングコストが学校側に由来するもの。
または学校が管理することが合理的であるもの。

 ④学校長に相談し、寄付の受け入れの承諾をもらっている。

 ➄100%任意加入である。
※寄付とは自発的な意思に基づいて行われるものであるため、入会届などをとらずに半強制的に加入させられて会費を取られているPTAだとしたら、学校は寄付を受け取れないことになる。

 ⑥総会で承認を得ている。

  <寄付ができるかもしれない物品例>
ウイルス除去機能付き空気清浄機、冷水機、多機能プリンター・ICT機器、熱中症対策テントなど
※寄付・寄贈の受入れについては学校長の判断となります。上記の物品に関しても、学校の状況に応じて受入れの判断は異なります。

 


 

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5.周年事業の寄付、寄付目的のバザー、ベルマークにおける寄付について

 

<周年事業の寄付>

●周年事業でのPTAからの寄付などについても「4.寄付ができるかもしれない物と条件」の通りです。
周年事業の場合、すでに特別会計で積立がされていたり、購入品目が決まっていたりします。
条件をクリアしているか、今一度確認をするとよいでしょう。

 

 <寄付目的のバザー>
例えば学校に冷水機を寄付したいなどの寄付目的のバザーは、学校に寄付をする物品の購入費用に会費を使うより、その目的に賛同する人たち(会員・非会員問わず)に向けたバザーで購入費用を集めるので良い方法だと思います。
寄付する物品と条件については「4.寄付ができるかもしれない物と条件」の通りです。
バザーの運営側のPTAが100%任意加入である必要があります。寄付とは自発的な意思に基づいて行われるものですので、入会届なく半強制的に加入させられて会費をとられている場合、その会費からの寄付は学校は受け取れません。

 

 <ベルマークにおける寄付>
ベルマーク活動で、学校の備品(公費)を寄付するのは、文部科学大臣により認可されている活動のため問題ありません。
(公益財団法人ベルマーク教育助成財団が文科省の認可を受けている活動で、参加できる団体は、PTA等、大学等、社会教育施設等の学習団体等になります。)
バザーと同様、運営側のPTAが100%任意加入である必要があります。寄付とは自発的な意思に基づいて行われるものですので、入会届なく半強制的に加入させられて会費をとられている場合、その会費からの寄付は学校は受け取れません。

 

 <周年事業などで地域や団体がからむ寄付>
周年事業などで、地域や団体がPTAの寄付にたいして、補助的に寄付をしてくださる場合があります。
この場合もPTAの寄付となりますので、この「PTAの学校への寄付の考え方について」を参考にしましょう。
ただし、補助的に寄付をくださる地域や団体が、「バスケットボールのゴールポスト」などの公費で水準的に整備されるものを希望される場合は、PTAからの寄付はできませんので、地域や団体から直接学校へ寄付の相談をするようにお願いしましょう

 

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6.寄付が決まったら

 

「4.寄付ができるかもしれない物と条件」をクリアし、学校長が受入れを判断して寄付が決定したら、「寄附書」(書式は学校にあります)を学校へ提出します。

 ※いままでこのページでは『学校に「寄附採納」(自治体に「〇〇を寄付します」という意思を示し、自治体がこれを受諾することにより成立する契約)の処理をしてもらう。』
としておりましたが、横須賀市では、PTAが学校へ寄付をする場合は「寄附採納」の手続きでなく、「寄附書」を学校へ提出してください。
また、特に目録を作成する必要はありません。


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 7.参考

 
「はじめに」で紹介したようなPTA会費の繰越金に関しては、寄付ではなく、下記のような使途も参考にしてみてください。

■PTA行事の記念品として全児童・生徒にクリアファイルや学用品、図書カードを贈る。
※本来、PTA会費で個人の利益になるものは支出NGですので、これらの物品の購入はNGです。
しかし、下記の2点に該当する場合は支出可能です。
1.卒業記念品や運動会の参加賞、PTAイベントの参加賞などであること
2.かつ加入・非加入に関わらず対象児童・生徒全配布するもの

 ■打上げ花火やPTA祭など、PTA主催イベントの開催。 ←市P協のHPで「PTA活動アイデア集」や「PTA企画お助け集」を公開しています。ご参考になさってください。

■美化運動用の備品一式。(PTA備品)
※PTAが「子どもたちがよりきれいな環境で学校生活を健やかに送ってほしい」という自発的意思で活動する学校美化運動用として購入する、清掃用品。

■周年記念事業として、学校の歴史や地域の風土記などをまとめた冊子の制作、配布。

■行事の記録や集合写真としての航空写真。
※学校施設の状況を把握するためなど、施設の整備に利用される場合はNGです。

 2025/06/27 改訂版

投稿日:2025年6月27日 更新日:

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