秋晴れに恵まれたすがすがしい空気の中、総合福祉会館に於いて教育フォーラム2024が開催されました。
今回のテーマは
子どもが求める魅力ある教室〜子供を主語にして考える〜
として、パネルディスカッション、ワールドカフェスタイルディスカッションの2部構成で話し合われました。
今回のフォーラムは何か答えを出す場所ではなく、いろいろな属性の方がこのテーマについて話し合う、非常に有意義なイベントです。
今年は100人以上の参加者で、非常に熱気のあるフォーラムとなりました。
●フォーラムに参加して
不登校当事者の方や経験者、その保護者の方もいらっしゃいましたが、ほとんどは不登校とは無縁な方々でした。
そういった方々の意見が中心となってしまいがちで、「話し合う」「明るく仲良く」など、ともすれば教室が同調圧力の塊になりそうな意見が各テーブルで多く見られました。
もちろん、理解し合うことは大切ですが、なんでもかんでも話し合っても全員の意見が合うとは思えませんし、無理に気持ちを聞き出すのは逆効果になることもあると思いました。
大切なのは、お互い違ってて当たり前、まずはそこから。
みんなの輪から距離を持つこともできる、それでいて居場所のある、個を尊重した教室づくりが大切だと思いました。
※フォーラムの詳細は以下にまとめて記載しますのでご参照ください。
2024年10月27日 教育フォーラム2024 当日の内容
子どもが求める魅力ある教室
〜子どもを主語にして考える〜
◾第一部◾
パネルディスカッション
・横須賀市の不登校児童生徒の現状
100人あたり。カッコ内は神奈川県。
H30
2.78
(1.93)
↓
R4
4.21
(3.18)
※県の平均より多い
※コロナ以降増加
※生徒数が減少している中で人数が増え続けている
長期欠席者 R元年→R4
小学校 409→780
中学校 704→808
相談教室の利用率は?
フリースクールの利用率は?
不登校、長期欠席者(年間30日以上)の違いは?
※不登校の定義
「何らかの 心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、 登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間 30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を 除いたもの」
※長期欠席児童生徒
長期欠席児童生徒の基準は、文部科学省が定義する「不登校児童生徒」の基準と同じで、年度内に30日以上欠席した児童生徒
・ディスカッション(魅力ある教室をつくるために期待すること)
パネリスト
横須賀総合高校 卒業生
横須賀総合高校 養護教諭
学識経験者(前島 光先生)
スクールソーシャルワーカー
登校支援相談員
⚫魅力ある学校とは
・横須賀総合高校 卒業生
中学生の頃に我慢することが多かった
服装、髪型、など(セーターは教室のみ、外に出る時はベストに着替える、など)
不登校の経験の原因はいじめと家庭環境の要因
相談教室は合わず相談室に通い、登校できるようになっていった
・横須賀総合高校 養護教諭
横須賀総合高校では、一人一人が安心して快適に過ごせる学校(綺麗、空調が整っている、自動扉、設備が整ったアリーナ)
・学識経験者(前島 光先生)
安心感がある学校を目指す。
集団として目指すのは温かさ
8.8%が支援が必要な子ども(対応する教師が模範となることで魅力ある学級ができる)
・スクールソーシャルワーカー
魅力のある教室は様々(先生が明るくリーダーシップをとる、生徒たちが明るく元気にチームワークが取れている)
思いやりを持った学級が魅力ある学級
・登校支援相談員
教室だけで完結しない、広い面で見る
居場所、頼れる人、ネットワークづくりが大切
相談室では24人が勤務し、毎日15人ほどの子どもたちが訪れる。
勉強させることは目的ではない、考えたことなどを話してもらう
⚫魅力ある学校は誰がつくっていくのか
・スクールソーシャルワーカー
皆でつくっていくもの。教師だけではなく、クラスメート、校長も大事。
職員室にその雰囲気があるかどうかは校長の意向が重要。
ともに輝いていく学級を目指す、ビジョンが重要
・登校支援相談員
子どもたちが中心、それを職員が暖かくサポートする。
・横須賀総合高校 養護教諭
誰が、というよりチームでサポート。
チームは生徒が中心になり、職員がネットワークを張ってサポートする体制。
あえてリーダーとするなら校長。
・横須賀総合高校 卒業生
小学校は担任の先生。
中学校はガッキュ委員など、生徒が主体。
当事者は支えにってくれる先生が欲しい。
・学識経験者(前島 光先生)
アセスメント。
教員がきちんと実態を把握する。
それがないと、施策は失敗する。
教員が子どもたちとしっかりとコミュニケーションをとることが重要。
集団をつくっている風土も重要視。
それが人由来なのか、環境由来なのかで作戦を変えて対処する。
⚫誰にとって魅力ある学校をつくっていくのか
・学識経験者(前島 光先生)
もちろん子どもたちにとって。
実態にあった学校経営。
時には子どもたちも関わってもらう。
子どもの意見を通せる学校が居心地が良い学校。
・横須賀総合高校 養護教諭
生徒にとって居心地が良い学校が魅力ある学校。
・横須賀総合高校 卒業生
生徒の意見が大事、通いたいな、と思えう学校が魅力ある学校。
静かに勉強したい人、ワイワイ楽しくやりたい人、意見が違うが学級委員なり担任がまとめられるのが理想。
・スクールソーシャルワーカー
大多数が居心地良いけど、居心地の悪い人たちは必ずいる。
そこをどうフォローできるかが肝心。
・登校支援相談員
集団と個、両方が大切。
個を尊重する。例えば子どもがNOと安心して言える環境が大事。
相談室に通っている子どもにも、クラスには帰属意識がある。
⚫先生が自ら模範になる、というが、できていないのではないか?
学校が恐ろしい、という子もいるし、先生もできないという声がある。
組織的な問題があるのは?
・学識経験者(前島 光先生)
組織的な問題はある。
実態把握にズレがあれば、組織的な問題が生じる。
⚫先生からは時間がないという声が聞かれる。無理なのでは?
・学識経験者(前島 光先生)
時間は作れる。
学校経営として時間や場所を作る。
⚫安心感のある教室にするためにすることを挙げられたが、誰がいつ、どのようにするか具体的に。
子どもたちにできることを教えてほしい。
・学識経験者(前島 光先生)
いつどこで→いつ、どこでも。子どもも教員もお互いのことを聞き合うこと。
子ども同士であれば、そこでの気づきがあれば、先生に話していくこと。
教員と校長が交換日記をしていたが、それが役だった。
・スクールソーシャルワーカー
一人一人の発言ができる場が大事。
とはいえ、発言できないような子もいる。
言いたいことが言えない子が1人でもいれば安心できる学級ではないと思う。
「ここにいていいんだ」と言いような安心できる場所づくりを意識すること。
承認と賛意の連鎖を感染させ、広げる。
・登校支援相談員
「いていいんだよ」と言う意識を持つ。
例えば不登校の子どもの机が移動している、上に関係のない荷物が積まれているなど、やってしまいがちだが、居場所をつくってあげることを意識する。
・横須賀総合高校 養護教諭
学校に来てよかった、と思ってもらえるような体制づくり。
声がけや相談できる教員など。
・横須賀総合高校 卒業生
ホームルームは適していない。
悩みは個人差がある、温度差もある。
教室内で子どもたちが普通に雑談ができつような時間が大切。
仲間外れにならないような学級づくりをしてほしい。
⚫不登校になった場合、欠席をどのくらいしたら適切な支援体制を紹介してくれるのか
・市教委
どれくらい、と言う決まりはない。
学校からの連絡が基本。
心配であれば保護者からも随時。
⚫親の不登校への理解がなく、辛い思いを下景観があるが、家族向けに適切な指導をする耐性はあるのか。
・スクールソーシャルワーカー
親の不理解が余計に不登校へ向かわせてしまうことも多い。
それは親の不安のせいもある。
親の安心もスクールソーシャルワーカー仕事として重要。
⚫不登校の友達が久しぶりに登校してきた時に、クラスメートができることとは?
・登校支援相談員
相談室に来づらい子どももいる。
不登校だけど遊びに行ける子もいるし、友達に理由を聞かれても本人もわかっていないこともある。
特別に何か聞き出そうとしたり無理やり相談したりするのでなく、ゲームを一緒にしたり遊んだりすることも大事。
◾第二部◾
ワールドカフェスタイル
第一ラウンド 学校に行く動機になっていること、楽しみにしていることは?
・勉強するため
・部活
・役割、責任があるから
・友達と遊ぶ
・授業が楽しい
・行事の取り組み
・文化祭
・単位取得、進路のため
・先生と話したい
・将来への学び
・義務
多かったのは友達と会えるから、勉強したいから
目立ったのは義務感(単位など)
家にいても仕方ないので、と言う意見も。
第二ラウンド 魅力ある教室をつくるために私たちにできることは?
・楽しいイベント
・厳しすぎない拘束
・個性を活かせる配慮
・認め合う雰囲気、安心できる環境
・素直に相談できる環境
・ムードメーカーの配置
・好きなものボックスに匿名で入れて、2人以上揃ったら用意する
・尊重し合う(多数決ではなく、少数の話も聞ける環境)
・お互いの話を聞ける環境
・学校以外の協力(地域、機関など)
・設備の充実
・自由な校風
・教室に友達がいる。一人きりにしない。居場所がある。
・担任の先生による魅力
・仲の良い教室を意識する、信頼できる仲間
・クラスカーストがない
・適度な距離感が取れる
・授業がわかりやすい、楽しい
・明るくて綺麗な教室
・居場所になれるカフェテリアがある
・生徒が主体となって行うイベント
・地域などから会話をする場所と時間の提供
・コミュニティスクールの活用。(イベント、場所、人)
・PTAの活用(美化や設備、郊外活動)
まとめに向けて
目立ったのが尊重し合う仲間たち、設備、楽しい雰囲気など。
ただ、仲の良さを追求する同調圧力は疲れるので、適度な距離感を持てるのも重要と言う意見が、とても印象に残った。
決して否定はしないが、お互い違ってて当たり前、と言う考え方から交流を図るのが答えなのではないか。
空間の共有、時間の共有、仲間の共有
この3つが魅力ある教室づくりに欠かせないものです。
(文:市P協顧問 櫻井 聡)